ゼルダの伝説 時のオカリナ
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https://www.nintendo.co.jp/3ds/interview/aqej/vol1/img/photo4.jpg
横田
で、『時のオカリナ』の話なんですけど、
メインの舞台であるハイラル平原で、
ダンジョンの冒険から、そこに戻ってくると、
聴こえてくる音楽が毎回違うんです。
曲の流れ自体は、そんなに変わらないんです。
でも、流れてくるメロディが、
いつも同じタイミングでこないんです。
しかも、同じ曲であっても、敵と戦ったりすると、
少しスリリングな曲調に変化して、
戦闘が終わると、また雄大な曲に戻ったり、
リンクが立ち止まっていると、静かな曲になったりと、
絶え間なく曲が変わっていくんです。
岩田
あそこでは決まった音楽を
ずっと流しているんじゃないんですよね。
横田
そうなんです。ハイラル平原では
「普通」と「戦闘」、そして「静かな」という、
3パターンの曲が切り替わるんです。
岩田
サウンドに割り当てることができる
メモリの制限が厳しかったあの時代には、
一般的に事前につくった音楽を
ストリーミングという技法で流すことが多かったのですが、
『時のオカリナ』で絶え間なく曲が変わっていくようなことができたのは、
NINTENDO64でロムカセットの特長を活かして
音楽を状況に合わせて合成していたからだったんです。
ただ、ハイラル平原のサウンドで
近藤さんがそのような仕掛けを入れていても、
あの当時、それに気がついて、
意識的に語れる人は少なかったかもしれませんね。
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近藤
最初に『時のオカリナ』の企画を聞いたとき、
「これはすごく大きなゲームになる」と思ったんです。
中央にはすごく広いハイラル平原があって、
そこでは馬に乗らないと、
端っこまでたどり着けないと言うし。
岩田
確かに馬のありがたみがわかるくらい
広かったですよね、ハイラル平原は。
近藤
それに、いろんなダンジョンに行っては、
ハイラル平原に戻ってくるというので、
いつも同じ音楽がそこに流れているというのは・・・。
岩田
飽きてしまうということですね。
近藤
そうなんです。
なので、ダンジョンに行って戻ったら、
またいつも同じ感じで曲の頭から流れるようなことは
ぜひとも避けたいと思いまして、
いつ聴いても違った感じに聞こえる曲を流すには
どうしたらいいのか、ということをまず考えたんです。
そこで、8小節の細かい“部品”をいくつかつくって、
それがランダムに鳴るようにしてみました。
岩田
それはつまり、コード進行が決まっていて、
“部品”を取り替えながら鳴らすような仕組みなんですね。
近藤
そうです。なので8小節の最後は、
どの“部品”にもうまくつながるようなコードにして、
それをランダムに流しても、自然に聴けるようにしました。
岩田
その、8小節の“部品”って、何個くらいあるんですか?
近藤
20個くらいです。戦闘とかも入れて。
岩田
だから、全体的な曲の雰囲気は同じでも、
毎回違うように聴こえるんですね。
近藤
そうです。で、敵が来たときに、
普通のRPGだと、曲がガラッと変わって・・・。
岩田
あの当時のRPGでは、
画面がまず切り替わって、ファンファーレが鳴り、
戦闘用の曲にバーンと切り替わるのが、お約束でしたよね。
近藤
はい。だけど、『時のオカリナ』では、
すごく遠くから敵の姿が見えますので、
そこで音楽を戦闘モードに切り替えてしまうと、
まだ戦ってないのに戦闘の曲になったり、
逃げたらまた元の曲に戻るなど頻繁に曲が変わって
ゲームの流れが寸断されてしまうんです。
横田
それだと、ゲームに没入できないんですよね。
近藤
そこで、戦闘の曲も8小節のパターンにして、
敵に近づくにしたがって、スムーズに
戦闘の曲に変わっていくような仕組みにしたんです。
横田
しかも、戦闘が終わると
スムーズに元の曲に戻るんですよね。
岩田
1998年のあの当時、
そういったことまで、曲づくりをしたというのは、
やっぱり宮本さんとゲームづくりをしているからこそ、
生まれてきた発想なんでしょうね。
横田
そうですよね。
映画だったら、安全なシーン、戦いのシーン、
落ち着いたシーンというのは、最初から尺が決まっていて・・・。
岩田
映画音楽だと、映像の尺を最初に決めて、
それに合わせて音楽がつくれますからね。
ところが、ゲームの場合は
インタラクティブにキャラクターを動かしますから、
音楽もインタラクティブに対応する必要があるということなんですね。